変体仮名を最速で入力する方法
はじめに
変体仮名とは、西暦1900年の「小学校令施行規則」より前に用いられていた、日本語の文字である。
漢字➞万葉仮名(漢字を、音だけを表す文字として転用したもの)➞草仮名(万葉仮名を崩し書きしたもの)➞仮名(漢字から独立した字形のもの)という文字の歴史の中で、(理論上)漢字の数だけあった仮名を、現代用いられている数に限定し、除外されたものを変体仮名と呼ぶようになったのが、西暦1900年というわけである。
そんな変体仮名だが、現在では主要なものがUnicodeに登録されている。ではどうやってそれを入力するかと言えば、IMEパッド等のコード表から、一字一字目的の文字を探さねばならない。
これではあまりに不便なため、解決策を講じることとした。
なお、筆者はWindows 11を使用している点、ご注意願いたい。
解決策
ユーザー辞書に、全ての変体仮名を登録し、予測変換で即座に入力できるようにした。
「仮名補助」(U+1B000..U+1B0FF)および「仮名拡張A」(U+1B100..U+1B12F)に含まれる計286文字が対象である。
これに以下の条件を加え、最終的に299文字を登録することとなった。
●NINJAL変体仮名フォントにしたがって、「ある漢字が複数のひらがなの字母となっている場合は、それぞれのひらがなの行に重複して列挙してい」る。
●U+1B000は後述の変体仮名フォントで未対応のため、U+1B11F..U+1B122はユーザー辞書作成過程で入力不可能だったため未登録である(いずれもカタカナのため問題はない。そもそもカタカナの変体仮名は、Unicodeで未実装のものもある)。
導入方法は以下の通りである。
⑴辞書データをメモ帳に貼り付け保存する。
⑵画面右下タスクバーの入力モードのボタン(「あ」や「A」などと表示されている箇所)を右クリックする。
⑶「単語の追加」を選択する。
⑷「ユーザー辞書ツール」を選択する。
⑸「ツール」タブ>「テキストファイルからの登録」を選択する。
⑹⑴のファイルを選択する。
注意点
●ユーザー辞書作成に当たっては、「仮名補助」はIMEパッドの追加他言語面から入力を行なったが、「仮名拡張A」は IMEパッドで入力不可だった(カテゴリ自体表示されなかった)ため、Word>レイアウトタブ>記号と特殊文字から入力を行なった。
●入力した文字を表示するには、変体仮名に対応したフォントをインストールする必要がある。筆者はIPAmj明朝フォント(変体仮名と他の文字の両方を表示できる。変体仮名交じりの文章を入力するのに便利)と、NINJAL変体仮名フォント(変体仮名のみを表示できる。仮名文を入力するのに便利)を利用している。
●「止」字母の「と」は、現代の平仮名でも採用されているのに、なぜかUnicodeに実装されていない。したがって、変体仮名のみを表示できるフォントを利用していると、「と」が入力できなくなる。
かと言って、変体仮名と他の文字の両方を表示できるフォントを利用すると、草書ベースの仮名と楷書ベースの漢字が混じって違和感MAXの文章が爆誕してしまう。
よって、草書のフォントをインストールした上で(筆者は衡山毛筆フォント草書を利用している)、これと上述のフォントを併用する(混ぜて使う)のが現実的な選択肢となる(他者に作成した文章を送信する機会はそう多くないだろうと思うので、PDF化するか、先方へフォントのインストールをお願いすることで対応可能だろう)。
おわりに
古文書の翻刻(文字起こし)は、現代の仮名に直すのが一般的である。
しかしそれでは字母レベルの再現性は失われてしまい、文字論研究は制限されてしまう。
変体仮名を含む、今は失われた古典日本語の文字表記のデジタル化は、まだまだ発展途上にある。
ただこのように、実現されたものを積極的に活用していくことで、発展に寄与できる部分は少なくないだろう。
群書類従本「土左日記」冒頭 出典:『群書類従 第410冊 第327巻』国立国会図書館デジタルコレクション |
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